経営逆手塾~4話

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《第四話》

 二枚の浴衣 


 京都の本物の一流旅館は、客に二枚の浴衣を準備するそうです。もちろんサイズはどちらもお客様の体格にぴったり合うものであり、考えもせずにMやLを適当に混ぜて置いておくような失礼なまねはしません。ではなぜ、同じサイズの浴衣を二枚お出しするのでしょうか。その答は最後に。
サービスの勘違い
 よく言われるとおり、小売業の流れはセルフサービスにあります。消費者が大型店やコンビニを好むのは、何でも買える便利さと同時に、余計な接客をされない気楽さがあるからです。消費者は自由に店内を見て歩き、自分で気にいった商品を買いたいというのが普通の心理。だから小売店は余計な接客をしなくてもいいのです。
          
 ただそれを「何もしないでいいんだ」「手抜きしてかまわないんだ」と考えるのは勘違い。余計な接客をしないとは、サービスを手抜きすることではなく、サービスしたい気持ちをぐっとこらえるということです。だからお客様がサービスを必要と望んだ時には、いつでも十分なサービスを提供できることが小売業の接客のあるべき姿なのです。
           
 たとえばお客様から「〇〇はありますか」と聞かれた時は、すみやかに商品をお見せして説明し、満足のいく買い物のお手伝いができなければいけません。「うちは値段を安くした分サービスをカットしていますので」などと言い訳する店は、小売業のあり方を完璧にはき違えているといえるでしょう。

ノーサービスとフルサービス
 サービスの考え方は、「余計なサービスをしないことがサービスである」というノーサービスと、「徹底的にサービスし抜いて満足を提供する」というフルサービスに二分されます。一般的には小売店はノーサービス業種であり、旅館や飲食店などのサービス業はフルサービス業種に分類されます。
          
 しかし実際は、どのような業種もノーサービスとフルサービスを場面に応じて使い分けることが大切。その場その場で消費者の要望を見極めて、一番いいサービスを考えるべきでしょう。 たとえば化粧品店では、いつも使う化粧水などを買う時は余計な接客は不要。放っておいてもらうのが一番のサービスです。でも新しい製品を試したい時などは、自分の肌や個性に合った十分なアドバイスを望みます。この二つのサービスの違いをきちんと理解している店が、「いい店」として消費者に評価を受けることでしょう。
          
 さて、冒頭にあげた浴衣の謎を解きましょう。2枚の浴衣は見た目にはまったく同じでも、客は触った瞬間に気がつきます。1枚は糊のきいたパリッとした浴衣、もう1枚は糊なしの柔らかい浴衣なのでした。誰でも旅館に泊まる時は、パリッとした浴衣を着たい日もあれば、疲れているので柔らかい浴衣にしたい日もあります。これは、どちらでもお客様のお好きな方をどうぞという気配りであり、ノーサービスとフルサービスを融合させた好例といえます。普通の旅館で食べ切れないほどのご馳走を出されるより、よほど大きな満足を感じるに違いありません。


「商業界」より

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このページは、西都商工会議所が2009年1月22日 13:54に書いたブログ記事です。

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